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祖母山麓トレッキングルート

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ありふれていた景色。実は宝物。

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ありふれていると思っていた景色が実は宝物。祖母山の麓で生まれ育った後藤こずえさんにとって、地元の草花は身近すぎて、その大切さに気付きにくいものでした。小さく、はかない宝物だから、知ってもらうことで守りたい。それが後藤さんの活動の源です。

後藤こずえさん

ごとう・こずえ 竹田市出身。高校卒業後、福岡市に進学、就職。その後、地元にUターン。祖母山がユネスコエコパークに登録されたことをきっかけに、地元の草花に興味を持ち、インタープリターとして活動を開始した。

ちょっとお茶しに行きますか

近所のカフェに行くように、インタープリターとしてガイドを務める後藤さんが誘ってくれました。お茶会のドレスコードは登山靴。場所は祖母山です。トレッキングツアーで花を観察してから、五合目の小屋近くの滝でコーヒータイムを過ごすことに。

普段はさっさと通り過ぎてしまう駐車場からの道のりでしたが、「あ、こっち」「見てください」と、後藤さんがあちこちに生えている草花を紹介してくれます。名前がわからないと、登山道のかたすみを生きる小さな植物という認識で終わっていました。名前や特徴を教わるうちに、登山道で多様な草花と出会えることに気づかされました。

後藤さんにそう伝えると、「私も全然知らなかったんです」と少し照れながらも笑顔を見せてくれました。

キバナアキギリ(シソ科アキギリ属)。大分県の準絶滅危惧種に指定されていますが、秋の祖母山トレッキングコースではよく見ることができます。

花を見つけては立ち止まり、また歩くため普段よりもゆっくりしたペースです。登ることが目的ではありません。すると、別の発見もありました。

背の高い針葉樹から爽やかな香りが漂っています。視線を上げると、木漏れ日がきらきら。大きく息を吸うと、気持ちがさらに穏やかになりました。五感をもっと上手に使えば、もっと山を楽しめるはずと思える瞬間でした。

カヤ(イチイ科カヤ属)。葉からグレープフルーツのような香りがします。
登山道で見つけたミズキの花柄(ミズキ科ミズキ属)。花も種も終わったあとに残る花柄はサンゴ礁のような色と形です。

祖母山の麓、穴森神社の近くで暮らしてきた後藤さん。小さい頃から、山麓の恵まれた自然の中で育ってきました。小学校の頃は、道草をくってばかりで遅刻が多かったそうです。

「本当に道草を食べてました。アケビやグミとか、ギシギシとか」

上級生から口にできる植物を教わり、一緒になって食べるのが日常になっていました。山に自生する植物がおやつがわり。とても贅沢に思えますが、それが後藤さんの日常でした。当時、目にしていた花が、後々になって貴重なものであったと驚くことになるのですが、そんなことも知る由もありませんでした。

木々の匂いを楽しみながらのトレッキングも楽しいものです。
雨上がりで水量が豊富だった一合目の滝。燦々と注がれる木漏れ日との共演です。

高校を卒業してからは地元を離れ、福岡市に進学、就職して13年間を過ごしました。

「はじめて働いた不動産会社は、博多駅前の1丁目。今の生活から振り返ると、びっくりしますね」

1年ほどで不動産会社を退職してからは、いろんな仕事を経験。30代に入って、地元にUターンして保育園の事務職に就き、ふたたび自然が身近にある暮らしを送るようになりました。そんなある日、地元がユネスコパークに登録されたことで、近所で見ていた花々の中に絶滅危惧種や希少なものがあると知りました。当然あるものだと思っていた風景は、貴重なものだと気づかされた瞬間です。

そのひとつがヤマシャクヤク。「その辺で普通に咲いているから貴重なものだと思わないじゃないですか」と庭木のような感覚だったようです。

ヤマシャクヤク(ボタン科ボタン属)も大分県の絶滅危惧種。春にかれんな白い花を咲かせます。花が終わってから出てくる種は、花の色からは想像できないほどの濃いピンク色をしています。

最初の驚きがきっかけとなり「花のことを見比べたり、調べていくうちにハマってしまいました。知識にはキリがなくて沼ですね」と後藤さんは笑います。

地元の草花が貴重だと知るにつれ、そこに住む自分たちが、守っていかなくてはいけないと思うようになりました。インタープリターとして、祖母山麓をガイドするのも、草花について紹介することが保護することにつながるからです。正しい知識を持ってもらえば、登山道を外れて踏み荒らすことも、むやみに採取することも減るのではないかと後藤さんは信じています。

おいしいコーヒーを気持ちのいい景色とともに。ゆっくり楽しめるトレッキングツアーです。

text:Takuya Wakaoka

photograph:Tomokazu Murakami


後藤さんがおすすめする祖母山で季節ごとに見られる花

花の解説:後藤こずえさん

大分県の準絶滅危惧種であるキバナアキギリ(シソ科アキギリ属)を撮影する後藤さん。

マンサク(マンサク科マンサク属)

大分県:準絶滅危惧(NT)ツボミのときはくるくると丸まって、花が咲くにつれ、徐々に広がっていく姿が何とも言えずかわいい。

クロモジ(クスノキ科クロモジ属)

高級楊枝で知られ、春先に小さな花を咲かせます。葉や枝にはクスノキ科独特の香油成分が多く含まれているため甘い香りがします。

ヒトリシズカ(センリョウ科チャラン属)

春になると花が咲きます。ツヤツヤな葉っぱがまぶしい。

キンラン(ラン科キンラン属)大分県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

ハルリンドウ(リンドウ科リンドウ属)

どちらも春の椎茸の収穫時期にホダ場に咲いています。キンランは絶滅危惧種に指定されており、この時期に見ることができる貴重な花です。

ツクシアケボノツツジ(ツツジ科ツツジ属)大分県:準絶滅危惧(NT)

毎年5月3日に開催される祖母山の山開きの時期に見ることができます。淡いピンク色の可愛らしい花は、登山者の疲れを癒してくれます。


タシロラン(ラン科トラキチラン属)大分県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

光合成をしないために葉緑素がなく全体が白い花です。腐敗した枯葉などで繁殖した菌類から栄養をもらう腐生植物の仲間です。

キレンゲショウマ(ユキノシタ科キレンゲショウマ属)大分県:絶滅危惧ⅠB類(EN)

身近な祖母山にも貴重な植物がたくさんあるという、花への興味のキッカケになった花です。初めて見れた時の感動は今でも忘れません。

オオヤマレンゲ(モクレン科モクレン属)大分県:準絶滅危惧(NT)

森の貴婦人と呼ばれています。花の時期になると沢山の人が群生地目当てに祖母山を訪れます。モクレンの仲間で、花の付近では甘い香りが漂います。

ウバダケニンジン(セリ科シシウド属)大分県:絶滅危惧IA類(CR)

植物学者の牧野富太郎が明治43年に祖母山で名付けた花です。実はまだお目にかかれていません。いつか見れる日を心待ちにしています。

シノノメソウ(リンドウ科センブリ属)大分県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)

8月くらいに咲く花です。トレッキングコース沿いで見ることができますが、絶滅危惧種に指定されているとても貴重な花です。紫色の斑点がある花びらを明け方の空に見立てたことからこの名前がついたそう。


ヤマホトトギス(ユリ科ホトトギス属)

祖母山の登山道で見かける花です。紫色の斑点模様と独特の花の形が個性的です。

キッコウハグマ(キク科モミジハグマ属)

その名の通り葉が亀甲の形をしています。花は白熊※に似ているので名前が覚えやすいです。花びらがくるんと巻いているのが特徴的なかわいい花。※白熊(はぐま)は竹田市の伝統芸能のひとつ

オオバショウマ(キンポウゲ科サラシナショウマ属)

線香花火のような白いフワフワの花を咲かせます。


フユイチゴ(バラ科キイチゴ属)

秋に白い花を咲かせ、冬になると赤い実ができます。

ヒメシャラ(ツバキ科ナツツバキ属)

左から_ヒメシャラの新芽、夏のヒメシャラの森、冬のヒメシャラの森、つるつるしたヒメシャラの樹皮。1年を通して好きな樹木です。新緑シーズンだけでなく、葉が落ちてしまった木を見るのも好きです。茶褐色の樹皮に特徴があり、山のなかでも容易に見つけることができます。

[ガイドツアー問い合わせ先]

◆竹田市観光ツーリズム協会

0974-63-0585

ご予約の際に「祖母山麓エリア再生プロジェクトのホームページを見た」とお伝えください。

[大分県竹田市の宿泊、観光情報サイト]

たけ旅

https://taketa.guide/

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